A 弁護士が依頼を受けて受任通知書を発送すると、多くの場合、債権者からの請求は止まります。
1 受任後から破産手続開始決定が出る前まで
貸金業者、クレジットカード会社、及び債権回収会社については、弁護士より受任通知書を受け取ると、法令や通達により、債権を取り立てるため債務者本人と連絡を取ることについて厳格に規制されるので、債権者からの債務者本人に対する電話連絡が止まることがほとんどです。
具体的に説明しますと、貸金業者については、貸金業法21条1項9号において、「債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること」をしてはならない、と定められています。
仮に、貸金業者が同号に違反すると、刑事罰(2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科される)の対象となります(同法47条の3第1項3号)。また、同違反行為は、行政処分の対象にもなります(同法24条の6の3など)。
また、クレジットカード会社については、通達により、債権の取立てに当たり、「債務処理に関する権限を弁護士に委任した旨又は調停その他の裁判手続をとった旨の通知を受けた後に、正当な理由なく支払請求をすること」を行ってはならないとされています(旧通産省通達)。
さらに、債権回収会社についても、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項において、「債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない」と定められています。
なお、債権者が個人の場合は、法令等による規制がありません。個別具体的な事情によって対応が変わってきます。
2 破産手続開始決定が出た後
破産手続開始決定が出た後は、基本的には、債権者が、債務者(破産者)に対し、電話連絡をしてきたり面会を強要してきたりするようなことはありません。
債権者がそのような行為に出ないよう、破産法275条において、当該行為が刑事罰(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する)の対象として定められ、厳格に規制されています。
3 むすび
以上でお伝えしましたように様々な規定があることから、貸金業者等に対しては、弁護士に依頼すれば、多くの場合、電話連絡を止めることができ、そして、債務者の置かれた状況に応じて、債務整理、民事再生、破産申立て等の手続を取り、生活の再建を図ることができます。